June 25, 2010
永遠の子供:最終回
勝ちましたね。おめでとうございます。
「国際試合で日本がこんなに余裕で勝っている」という状況を
経験したことがありません。これまでの「あがれ」とか「さがれ」
とかじゃなく、だれがだれのところで何をするということが明快
な試合をはじめて見ました。困難を経て削ぎ落とされたチーム
に成長したのですね。目標はベスト4といったことも含めて、
今何のために何をやっているのかの意思統一が明快ですっき
りしているのがいいですよね。
選手たちが試合の最後までよく走れていて、目線も安定してい
るのが非常に印象的でした。ぼうっとしている時間がなくなって
います。食事と睡眠の状態がよいことが想像できます。
戦略的に次々に場に応じた策が展開される点からも、バック
アップ陣営の頭脳が明晰に働いているのが見えます。
コンディションのよさが快進撃のベースとして間違いなくある
でしょう。
こんなに晴れ晴れと梅雨の季節をおくれることに感謝しなくては。
今日はシリーズ最終回をお送りします。
私の練習の日々の中で最後の課題はスタンドスティルでした。
練習に完璧という状態はどうしてもなくて、限られた時間の中で
優先順位をつけてやっていくことになります。ペアで踊る場合
シャインを仕上げることがとても難しいために、まずそれをはや
い段階で覚えていってもらいます。次にペアワークをやって、
最後に自分のことをやる、という順番になります。
このころになって一番しんどいのが脚と脳の疲労とのたたかい
です。練習がこんでくるので疲れを抜く時間がなく、脳の働きも
鈍ってアイデアが浮かびにくい状態においこまれていきます。
特に今回は直前の赤坂のソロパフォーマンスでいったん心身が
極限状態までおいこまれました。十分栄養をとっていたものの
その後一週間での完全回復は到底ままならず、その後の一週
間は脚が常にふるふるしていました。
そういう中でのスタンドスティルの練習というのは・・・正直いって
もう勘弁してください、という感じでした。クラブで気持ちよく曲に
のるというのとは違って、パフォーマンスの場合はパワープレイ
に持ち込まないと、何をやってるんだか一体・・・という雰囲気に
なってしまいます。しかし疲れているときというのは「もういいじゃ
ん、それくらいでいいじゃん」という声が常に常にきこえてくる。
これを振り払うのが非常にしんどかったです。
自分は練習でもパフォーマンスでも、何か一個目標を決めて
おいて、今回はそこをクリアできればOK,というやり方をとる
ようにしています。実はこの方法をとるようになったのは今年
に入ってからで、日はごくごく浅いです。4月ごろからだったかな
と思います。冬の間、教室として面白く実のあることをしようと
様々に工夫を重ねてきたのですがそれがうまくかみ合わない
苛立ちをずっと抱えていました。その半年の間に、漠然と何か
に取り組んでも結果は出ないんだという気付きがあったように
思います。
それから一回のレッスンごとに、一回の特別企画ごとに、明快
な理由をセッティングする癖がつきました。お呼びしたい生徒
さんのイメージをクリアに持ったり、レッスンの中で今日はこれを
伝える、というポイントを一個に絞ったり、です。これがかちゃっ
と音をたててはまったのがブートキャンプです。これは自分の
できることと世の中の人々に潜在的に要求されていることが
完全にかみ合った、この教室をこれまでやってきたうえで
もっとも意義ある行動の一つだと感じながらやらせていただい
ています。
そういったレッスン・イベントと、パフォーマンスにおける目標
設定の仕方というのは実は非常に似通っていて、なんら特殊
なことはありません。何のために何をやるのかということを
クリアにして、それを達成できればよい。ペアとしてはシャイン
でしっかりアピールしようというのが今回の私たちの目標で、
私個人としてはスタンドスティルできちんとした仕事をしよう、
ということでした。
実際はスタンドスティルを全体としてきちんとまとめる、という
課題はクリアできませんでした。悔しながら体力が残っていな
かったと告白せざるをえません。またスタンドスティルは女性
の仕事と思われていますが実際は違います。ペアワークと
同様に「合わせ」の作業がとても重要だと感じています。
女性に踏む力がなければ当然スタンドスティルそのものが
成立しないのですけれども、スタンドスティルをショーとして
仕上げる上で必要なのは二人のフレームに対する重要性の
認識、入りとまとめに関する音楽的な感性を一致させる作業、
さらにパフォーマンスの場合正面=最重要の観客に対して
二人の体や顔の角度をどのようにつけるかという映像的な
問題。そこまで双方が理解していてはじめて実現する、本当
に奥の深い世界であろうと思います。
最後に、本番にあたってはやはり「できる」という強烈なイメー
ジを抱いて臨むことが大切です。一歩外せばもとに戻れない
のがスタンドスティルです。
今回練習していて改めて痛感したのは、スタンドスティルは
一に筋力二に筋力、三も四も五も全て筋力だということです。
はっきり言えば、根性です。楽しく練習して「いつのまにか」
スタンドスティルができるようになりました、ということは絶対
にありえないということです。私は今回しゃがんで立つことが
できるようになりました。しゃがんで立つ。それだけです。幼
児だってやっています。しかしそれが本当に苦しかった。
センセイとて普通の人間です。一度に一個しかできません。
誰だってそうなんじゃないでしょうか。
その後、DAISUKEくんは千手観音の振りをすっぽりとばし
ました。おおまいがっ。でも、それも「なぜ」「どうして」といえば
答えは一つしかありません。本番だから。それだけです。
とばす、滑る、忘れる、パニックする。それが本番である。
ある意味こんなに明快なこともないんですよね・・・。
ペアワークの振りを忘れたらCBLでつなぐという打ち合わせ
通りにしのいで次につなぎました。
戻ってこれた理由は曲を聴きながらのイメージトレーニングを
彼がめちゃめちゃに繰り返していたからです。とにもかくにも
最小限のダメージでこらえました。
パフォーマンスの後半は・・・そうですね、「難破船にならずに
帰還しました」という感じになりました。見ていた皆さんはもう
もどかしくて身悶えされていたことでしょう。申し訳ありません
でした、と笑顔でいわせていただいてもいいですか。
大切なことは、できなかった事実から逃げないということでは
ないかと思うのです。
長かったシリーズはこれでおしまいです。私たちはダンスと
いう偉大な存在を前にしていつまでも小さな子供であり続ける
ことしかできません。私たちは人生で数回・もしかするとただ
一度の幸運を手にいれることを夢見る永遠の子供です。
それでは、今晩両国でお会いしましょう。今日がスタンドスティ
ルの日なのはたまたまです。いい練習しましょうね。
経験したことがありません。これまでの「あがれ」とか「さがれ」
とかじゃなく、だれがだれのところで何をするということが明快
な試合をはじめて見ました。困難を経て削ぎ落とされたチーム
に成長したのですね。目標はベスト4といったことも含めて、
今何のために何をやっているのかの意思統一が明快ですっき
りしているのがいいですよね。
選手たちが試合の最後までよく走れていて、目線も安定してい
るのが非常に印象的でした。ぼうっとしている時間がなくなって
います。食事と睡眠の状態がよいことが想像できます。
戦略的に次々に場に応じた策が展開される点からも、バック
アップ陣営の頭脳が明晰に働いているのが見えます。
コンディションのよさが快進撃のベースとして間違いなくある
でしょう。
こんなに晴れ晴れと梅雨の季節をおくれることに感謝しなくては。
今日はシリーズ最終回をお送りします。
私の練習の日々の中で最後の課題はスタンドスティルでした。
練習に完璧という状態はどうしてもなくて、限られた時間の中で
優先順位をつけてやっていくことになります。ペアで踊る場合
シャインを仕上げることがとても難しいために、まずそれをはや
い段階で覚えていってもらいます。次にペアワークをやって、
最後に自分のことをやる、という順番になります。
このころになって一番しんどいのが脚と脳の疲労とのたたかい
です。練習がこんでくるので疲れを抜く時間がなく、脳の働きも
鈍ってアイデアが浮かびにくい状態においこまれていきます。
特に今回は直前の赤坂のソロパフォーマンスでいったん心身が
極限状態までおいこまれました。十分栄養をとっていたものの
その後一週間での完全回復は到底ままならず、その後の一週
間は脚が常にふるふるしていました。
そういう中でのスタンドスティルの練習というのは・・・正直いって
もう勘弁してください、という感じでした。クラブで気持ちよく曲に
のるというのとは違って、パフォーマンスの場合はパワープレイ
に持ち込まないと、何をやってるんだか一体・・・という雰囲気に
なってしまいます。しかし疲れているときというのは「もういいじゃ
ん、それくらいでいいじゃん」という声が常に常にきこえてくる。
これを振り払うのが非常にしんどかったです。
自分は練習でもパフォーマンスでも、何か一個目標を決めて
おいて、今回はそこをクリアできればOK,というやり方をとる
ようにしています。実はこの方法をとるようになったのは今年
に入ってからで、日はごくごく浅いです。4月ごろからだったかな
と思います。冬の間、教室として面白く実のあることをしようと
様々に工夫を重ねてきたのですがそれがうまくかみ合わない
苛立ちをずっと抱えていました。その半年の間に、漠然と何か
に取り組んでも結果は出ないんだという気付きがあったように
思います。
それから一回のレッスンごとに、一回の特別企画ごとに、明快
な理由をセッティングする癖がつきました。お呼びしたい生徒
さんのイメージをクリアに持ったり、レッスンの中で今日はこれを
伝える、というポイントを一個に絞ったり、です。これがかちゃっ
と音をたててはまったのがブートキャンプです。これは自分の
できることと世の中の人々に潜在的に要求されていることが
完全にかみ合った、この教室をこれまでやってきたうえで
もっとも意義ある行動の一つだと感じながらやらせていただい
ています。
そういったレッスン・イベントと、パフォーマンスにおける目標
設定の仕方というのは実は非常に似通っていて、なんら特殊
なことはありません。何のために何をやるのかということを
クリアにして、それを達成できればよい。ペアとしてはシャイン
でしっかりアピールしようというのが今回の私たちの目標で、
私個人としてはスタンドスティルできちんとした仕事をしよう、
ということでした。
実際はスタンドスティルを全体としてきちんとまとめる、という
課題はクリアできませんでした。悔しながら体力が残っていな
かったと告白せざるをえません。またスタンドスティルは女性
の仕事と思われていますが実際は違います。ペアワークと
同様に「合わせ」の作業がとても重要だと感じています。
女性に踏む力がなければ当然スタンドスティルそのものが
成立しないのですけれども、スタンドスティルをショーとして
仕上げる上で必要なのは二人のフレームに対する重要性の
認識、入りとまとめに関する音楽的な感性を一致させる作業、
さらにパフォーマンスの場合正面=最重要の観客に対して
二人の体や顔の角度をどのようにつけるかという映像的な
問題。そこまで双方が理解していてはじめて実現する、本当
に奥の深い世界であろうと思います。
最後に、本番にあたってはやはり「できる」という強烈なイメー
ジを抱いて臨むことが大切です。一歩外せばもとに戻れない
のがスタンドスティルです。
今回練習していて改めて痛感したのは、スタンドスティルは
一に筋力二に筋力、三も四も五も全て筋力だということです。
はっきり言えば、根性です。楽しく練習して「いつのまにか」
スタンドスティルができるようになりました、ということは絶対
にありえないということです。私は今回しゃがんで立つことが
できるようになりました。しゃがんで立つ。それだけです。幼
児だってやっています。しかしそれが本当に苦しかった。
センセイとて普通の人間です。一度に一個しかできません。
誰だってそうなんじゃないでしょうか。
その後、DAISUKEくんは千手観音の振りをすっぽりとばし
ました。おおまいがっ。でも、それも「なぜ」「どうして」といえば
答えは一つしかありません。本番だから。それだけです。
とばす、滑る、忘れる、パニックする。それが本番である。
ある意味こんなに明快なこともないんですよね・・・。
ペアワークの振りを忘れたらCBLでつなぐという打ち合わせ
通りにしのいで次につなぎました。
戻ってこれた理由は曲を聴きながらのイメージトレーニングを
彼がめちゃめちゃに繰り返していたからです。とにもかくにも
最小限のダメージでこらえました。
パフォーマンスの後半は・・・そうですね、「難破船にならずに
帰還しました」という感じになりました。見ていた皆さんはもう
もどかしくて身悶えされていたことでしょう。申し訳ありません
でした、と笑顔でいわせていただいてもいいですか。
大切なことは、できなかった事実から逃げないということでは
ないかと思うのです。
長かったシリーズはこれでおしまいです。私たちはダンスと
いう偉大な存在を前にしていつまでも小さな子供であり続ける
ことしかできません。私たちは人生で数回・もしかするとただ
一度の幸運を手にいれることを夢見る永遠の子供です。
それでは、今晩両国でお会いしましょう。今日がスタンドスティ
ルの日なのはたまたまです。いい練習しましょうね。
salsaconsul at 06:52│Comments(0)│TrackBack(0)