April 16, 2023

不器用の貯金

今日、先日私が日暮里サルーで久しぶりにお教えしたCBLの動画をヒューストン在住のメキシコ人がシェアしてくれました。私のサルサのルーツはキューバのスタイルですが、CBLはメキシコ系で完成させています。だから「・・・やっぱりな」と思いました。こうして見ず知らずの人とダンスを通じてツーカーになれるというあたりが楽しいところです。

一方で、かつてもここに書きましたが、ロサンゼルスのキューバ人コミュニティの老人たちは私のダンスを非常に好んでくれました。あのときの人たちはおそらくもうこの世にいません。彼らは私のダンスをみて、やっぱりキューバっていいだろ?と思っていたのに違いないのです。こうやってみんな、手前味噌で自分のルーツを誇っているのです。

最近のこの世にいない話を今日はここに書こうと思います。書くまでけっこう迷いました。

前回、Kzとの原宿レッスンをした帰りのことです。その日も生徒さんとともに楽しく飲み会をしました。インバウンドが完全復活をとげ、いい天気でもあったので竹下通りの混み方は尋常でなく、Eさんはじめとする生徒さんたちが苦労して席を見つけてくれたのでした。

写真嫌いの私ですが、日暮里サルーでのレッスンをスタートしたこともあってsnsからそうそう逃げ回り続けるわけにもいきません。いまどきはもうsnsを制したものが物事を制するのであって、それをするつもりがないのならそもそも何も始めちゃいけない時代です。引き受けて以来、一日の半分はスマホかパソコンいじりをしている。レッスン開始の前の三日間は睡眠時間が3時間を切っていた。まあ、そういう時代なんです。

幸い自分もみんなもいい顔をしていて、なんだかいい写真がいっぱいとれた一日でした。私は仕事は突如として膨れ上がるわプレッシャーはすさまじいものがあるわで、日曜日のスタジオレッスンはまるで田舎に帰るかのような安らぎを(竹下通りで、だよ)覚えていたのでした。

その帰り道。私は例によって電車の一番端っこに乗りました。そこでぼうっとするのが好きなんです。このときは一番前で運転席が見えるところでした。15分くらい走ったところだったでしょうか。すごい急ブレーキがかかりました。そしてどすーんと電車が止まって。運転士の方が「人身!人身!」と大きな声を出すのがガラス越しに聞こえました。

電車が止まるとき、私の真下の車輪がぐわんがごんと何かに乗り上げた感触が足の裏に鮮明に伝わりました。そのとき私の真下、まさに真下で、一つの命が空に還ったのです。体がざわざわして、茫然として、何も手につかなくなりました。

運転席のほうから通信のやりとりが丸聞こえでした。「人身。間違いない。山の方から」と。どうやら電車でもって高い方の側を山と呼ぶようでした。そして「(確認に)ぼく行きましょうか」という声に対して「一緒に行くわ」と答える声。つとめて冷静に、難局を乗り越えようとする同僚同士のやり取り。

こわい、かなしい出来事でした。たまたま少し前に、電車の人身事故に関するネット上の書き込みを多数読んだばかりでした。見た人はトラウマになる、と書いてありました。私は見ることはありませんでしたが、違う衝撃を味わっていましたし、多分、あとになって何回も思い出すことになるんだろうとは思います。

ただ、そのとき思ったんです。日暮里はうまくいく、と。これほどのことに遭遇するということは、普通でない運気の中に今自分はあるんだと感じました。また、本当であればもっと生きられたはずの人の命までいただいたからには、自分はその重みのぶんだけがんばれるはずだと思ったんです。

何の功徳を積んだのかよくわかりませんが、私の人生がどうにも不器用にすぎることを神様は見ているのでしょう。そう、不器用の貯金がいま満期を迎えて放出されはじめているていなのです。



salsaconsul at 01:26│Comments(0)■SALSA FRESCA泣き笑い 

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