May 28, 2011

一番星みつけた

NYLON




雑誌"NYLON"が面白い。
おすすめしておきます


二日間の休暇をとった。私にとっておそらく5年ぶりか、もしかして
10年ぶりの本当の意味の休暇だったと思う。
休暇とは仕事のあるなしではなくて心安らかであるかどうかである
から、何かを切実に追いかけている人間に休暇はない。
2011年5月25日の楽○は私の人生の節目になった。
あの風景を見たくて私はこれまで走り続けてきたんだと思う。

後藤魂くんが演奏する姿を見ているうちに、まだ踊っていないのに
顔がほころんでいく何人ものゲストの顔を私はフロアの隅から見て
いた。本当にいいものに触れると人は思わず笑ってしまう。中には
泣き出してしまいそうな顔もあった。

あの日に行き着くまでの流れを一つ一つたどっていくと、どこまでも
どこまでも出会いと決断の連続が過去につらなり、結局のところは
自分が生まれたことそのものに行き着いてしまう。人は使命をもって
この世に生まれる。それに気付くことができた自分は幸せだ。

私の母は歌の名手で幼い頃の自分にとっては非常に厳しいピアノ
の教師でもあった。母は私に音楽の才能の芽があることにすぐに
気付いたからそれはもう期待もし、練習もさせた。しかしよくあるよう
に、幼い子供にとって母に求めるのはただもうあまえたいとかほしい
ものを買ってほしいとか、そんなものばかりで、表現の解釈の対立
なんてものが家庭の中にあったらつらいばかりである。私が癇癪を
おこして鍵盤をたたきつけて大喧嘩になり、やがて思春期を迎えて
ピアノの置いてある部屋に足を踏み入れもしなくなるのを、母は実
にさびしい思いで見ていたことと思う。

やがて実家を離れ、私が何に心奪われ始めたかを家族は知ること
なく長い年月が流れた。空白の十数年が存在する。
たとえば誰かに一目ぼれしたときに思わず人が無口になるのと
同じように、私はサルサに対する想いをそう簡単に口にはしなかっ
た。自分がこれまで中途半端に投げ出してきた様々なもの、あるい
は好きだと思ってもいざはじめてみたらただ苦痛でしかなかった
多くのもののことを思うにつれ、「本気宣言」はそう簡単に発する
ことができなかった。

私の夢の中に、サルサをダンスとしてマスターしたいという気持ち
がまずあり、その先方にサルサを通じて自分が持ちたいと切実に
願いながら手にできなかった「人に心を開く」という行為があった。
この順番はおそらく自分には変えることができなかっただろう。
自分の懐に強く信じられる刀があると思うから人は人に寛容に
なれる。寛容で懐の深い大人の女に成長するためにはぜひとも
サルサをマスターする必要があった。

長い空白の期間を経て、先日横浜サルサコンテストにはるばる
北海道から来浜(らいひん、とでもよんどいてください)した母は
私の変貌ぶりにつくづく驚いていた。また、生徒たちと私との間
にあるしっかりした絆に心底感激していた。そして「もう大丈夫
だね」と安心して帰っていった。母は教室に顔をだしているはずも
ないのに私の生徒一人ひとりのことを実によく知っているし、気に
なることがあればメールや電話であの人はなんていう子だったっけ
などときいてくる。世界一の私ファンで、私の教室生ファンである。

さらに私の顔をみると「あんたのあそこが悪い」と批判の言葉しか
出てこない姉からはるばる奈良から電話がかかってきて「すごく
よくなった」といった。縁起でもないからやめてほしいと思ったほど
びっくりした。でも嬉しかった。

こうして私は刀を手にした。しかし楽○の直前、私は集客の責任
からくるプレッシャーで木曜日のレッスン中に泣き出してしまった。
細かくは種種雑多なトラブルと締め切りと手に負えないほどの
仕事をかかえていたのだけど、集約すれば「今度の楽○がもし
うまくいかなかったら・・・」という不安が膨れあがり、正常な精神
状態を保てないまでにいたってしまったようだ。あの日は号泣しな
がらストレッチと筋トレとアイソレーションをしていて、その間だまっ
てレッスンを受け続けてくれた生徒さんには心から感謝している。

楽○は当日にも思いがけないアクシデントにいくつか見舞われて
いる。直前まで気が抜けない状況で口のなかがねばつき、もう
お客さんが集まり始めているというのにワタシは裸足で会場を
おろおろと走り回っていた。いざシューズを履いてみれば紐が
一本切れている。悪い予感がした。しかし時は容赦なくすぎゆく。

こういうとき音楽の力は強い。音楽を耳にしただけで人は心和み
幸せな空間に包まれていくものだ。チャチャのレッスンの間に
私の心にも仏陀がおりてきた。

そしてゲストが集まり始める。9時のライブが始まるまでの間に
どれだけ集まってくれるのか。鳥肌のたつようなリハーサルを
きいているだけに、客足の出足の遅いことに臍をかむ気持ちに
なる。きいてくれ、みんな今日のライブをきいてくれ、今日の演奏
で踊ればサルサに対する概念が根本からくつがえるかもしれな
い・・・時計の針と来客リストの間を目が往復し続けていた。
仏陀の顔が金剛仁王の顔になろうともいうものだ。

外で待機するミュージシャンもちらちらと会場内を盗みみては
客足を気にしている。どれくらい人が集まっているかでミュージ
シャンのモチベーションが全然違ってくることくらいこちらにもわ
かるから、なおのこと、今ここに向かっている人々に拡声器で
呼びかけたいような気持ちになる。

ライブは9時をおよそ15分まわってスタートした。そのときにはすで
に十分なゲストが集まっていたけれど、驚いたのはライブが始まって
からも続々と人が入ってきたことだ。やはりみな様々な事情を抱えて
9時には間に合わない、それでもなんとか、という思いでムリをおして
駆けつけてきてくれているのだ。

そこにいるみんなが、今日の演奏がただごとではないことに気付い
ていた。リーダー後藤魂のダンサーに対する理解の深さはめったに
ない類のものだ。演奏の技術そのものはいうに及ばず、「躍らせる
ために今自分たちは今ここに呼ばれている」ということを完全に理解
しつくした選曲と控えめな立ち振る舞いに、ダンサーは熱狂し私は
ただただ感謝と感激の雨にさらされる思いでいた。フロアは踊る
ペアと演奏に見入る人々の眼差しでまさにメルトダウン状態になった。

本当にいいものにふれたとき、人は思わず笑って動けなくなってしま
う。後藤くんは人にそうさせる力を持ったピアニストだ。佐野俊介くん
のベースは過度のグルーブを主張することなくそれでいて一分の隙
もなく後藤くんを支えた。ゲストの高野さんはその二人をひきたてる
ように、またダンサーの心を浮き立たせるよう気配りをみせた。

このライブは間違いなく「楽○(Raku-en)」・・・私がヒゴちゃんと出会っ
て組み始めて、以後場所を市ヶ谷に移した時代から、多くの方々の
協力をいただきながら積み上げてきた時間の先方に華々しく輝いた
一番星だと思う。特に私が立ち往生したときにボランティアで動いて
くださった生徒さんにはお礼の言葉もない。

来場してくれたゲストの全ての皆さんにお礼を申し上げたい。
名もないイベントに足を運んでいただいてありがとう。
私と長年のつきあいになる生徒さんにお礼をいいたい。
限られた時間の中でこの教室と縁をつないでくれることのありがたさ。
行きたかったけどどうしても行けなくて・・・と思ってくださった方。
その気持ちも届いています。それは次もまたがんばろうという私に
通じ、その気持ちがDJとミュージシャンに伝播します。

だからみんな、これからもどうぞ楽しみにしていてください。
気をおくってください。よろしくお願いします。

今晩から新生KARAKURIの練習が始まります。
こちらのレポートにもどうぞご期待ください!

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この記事へのコメント

4. Posted by RIO   May 30, 2011 23:30
ieie、いつなんどきでもワタシメに会いにきてくださることが幸せでありまする。それがたとえ10年に一回であってもお待ちしています
3. Posted by KONOMI   May 30, 2011 02:12
あ、やっぱりばれてましたね(^。^;)
「大好き」はどうしても顔と行動に出てしまいます。
スポット的にレッスンに行くことで、かえってご迷惑をおかけしますが、今後ともよろしくお願いいたします。
( ^.^)( -.-)( _ _)
2. Posted by RIO   May 29, 2011 14:36
KONOMIちゃん、ぜんぜん密かじゃないっす!!愛を!!
1. Posted by KONOMI   May 29, 2011 13:36
ぎりぎりまで頑張った時、限界を超えたとき、何故か泣きたくなるものですね。まるで子供のように。
お疲れだったのですね。。。

それにしても楽○は、素適なリズムで、ピアノが最高でした!!
スチームサウナのような熱気の中で、踊らずにいられないくらい。

私はサルサも好きですが、RIO先生という人間にすごく興味があって、惹かれているのです。
学ぶことも、感じることも沢山あります。

だから時間が取れる限り、RIO先生が頑張る限り、RIO先生に会いに行きます。

ずーっと密かに応援していますから。

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