September 08, 2010

スパニッシュ・ハーレムのサルサ

コングレス三日目。これ以上の練習はもう無理、という感じに
いよいよなってきた。
立派な会場とはいえ朝から詰めているとやはりしんどい。
ハリケーンが抜けてようやく涼しい風が吹いたこともあって、
会場をエスケープしてイースト(スパニッシュ)・ハーレム、
通称"EL BARRIO"の様子を見に行くことにした。

前回はかなりアッパーサイドのドミトリーに滞在していたが、今回
は会場との便を重視してダウンタウンのチェルシーにいる。ニュー
ヨーカーは一年半の間にここまでお洒落になったのか、とびっくり
してしまったけど、エル・バリオにいったらなんのことはないTシャ
ツとゆるいジーンズ姿は何も変わってなかった。自分の居場所が
変わっただけだったのね。

街を歩いてみると、前回とくらべて人々の表情がずいぶん明るい。
季節的なものを差し引いてもなんだか勢いがある。大きな声で
やりとりしていたり、道端の物売りの威勢がよかったり。不景気は
続いていても底はうったらしいことが感じられる。
車からサルサ・オールド・スクールが流れてきて、通りすがりの
人が一緒に歌っていく。

エル・バリオの交差点にあるCDショップ:カーサ・ラティーナは
ヨーロッパ人のニューヨークの遊び方では定番コースに入ってい
るそうだ。その斜向かいにもう一軒CDショップがある。
両方とも時間さえあればぜひ訪ねたいと思っていた。ネットで
買うのは簡単だけどこうやって訪ねることが嬉しい。

どこにいきたいんだ、と声をかけてきた人がいてセントラルパー
クに向かって歩きたいといったらこっちだといわれる。写真をとっ
ていたらエル・バリオのフォト・コンテストに出すの?ときかれる。
こういうひとことひとことが街の明るさを演出してくれる。

鉄道の高架下から聞き慣れたリズムと笛の音がきこえてきた。
誰かがラジカセで流しているのかと思ったら、近づくにつれて
ものすごい数の人々が集まっているのが感じられた。
ぴっぴぴ〜〜〜という笛の音とともに私はいきなり祭りの渦に
飲み込まれた。

高架下のスペースに折りたたみの椅子が並べられ、ビールと
焼肉の屋台がでて、一段低くなったところにバンドとダンスの
ステージが設けられている。そのさらに向こうにも人々がいる。
集まっているのは地元のおっちゃんおばちゃん層で、ちょっと
そこまでお祭りに、という風情だった。地元密着なので人々の
顔は安心感でいっぱいだ。そこに酒っけが入ってごっきげんで
歌って踊っている。かかるサルサは全部オールドスクールで
みんなが歌えるものばかり。皆の楽しそうな様子を動画に撮り
ためていたら、おじいちゃんが「この感じ、好きかい?」ととても
嬉しそうにきいてきた。われらの村がビジターにうけるのは
誰でもうれしい。

そこへバンドが登場してくる。ひっぱりにひっぱって始まった曲は
エクトル・ラボーのエル・カンタンテ。バンドの正規メンバーの
ほかに客席の中に全然関係ないリズムセクションがいて、こと
わりもなくクラーベだのマラカスだのじゃかすかじゃかすかやっ
て盛り上がっている。機械を使わないドルビーサラウンドなの
だった。せめて曲の締めの「パッ・パッ・パ〜〜〜〜〜」は正規
のバンドにあわせるのかと思ったら見事に外した。
でも誰も気にしていないのだった。

続いて同じくエクトル・ラボーの大ヒット曲、アグアニレ。
ハイスピードでパフォーマンスにもよく使われるこの曲のリズムは
聴いている人々をトランス状態に持ちこむ。客席は大興奮。

エル・バリオに生きる人々にとってのサルサがどういうものか。
アウア・ラテン・シングといった過去の映像で見る人々と全く
変わらない姿がそこにありました。彼らにとっては70年代と今
とはほとんど変わっていないようでした。

一方で、そこから50ブロックのところで開催されているサルサ・
コングレスで踊られているサルサがすでにエル・バリオのサル
サとは完全に別物であることを確認しました。それはかすかに
寂しい体験でもありました。

ここはニューヨークですが、ON2で踊っている人はお祭りには
いません。見ていて一番多数派だったのは1・3・4です。
これが彼らがお酒を飲んで気分的に抜けたときにもっとも楽な
踊り方であるように見えました。

一方でコングレスではほとんどがON2です。ニューヨークの中
でサルサは人々が心のままに3歩ずつ踏む踊り方からON2へ
と進化を遂げ、この二つはテイストのうえでも遊び方としても、
異なる道を歩むことがすでに決定づけられているようでした。


salsaconsul at 21:29│TrackBack(0)□2010年アメリカの旅 

トラックバックURL

携帯にブログ更新を通知
出張・出演のお問い合わせ
RIO presentsSALSA FRESCA TOP
これまでの記事
記事検索