August 29, 2010

二日目の夜の話

ギターショップ

ホテルの正面にギター
ショップがあった。

遠出から帰ってきて
この店構えがみえると
心底ほっとしたものだ。

前回ロサンゼルスにきたときも全く同じだったのだが、午後の
3時前後に突如ものすごい眠気がくる。日本時間だと午前11
時ごろで一番頭が冴える時間のはずなのに、これはほんとに
不思議だ。このときは何をやっていても突然すこーんと落ちて
しまう。

ドライブからもどると前後不覚に眠ってしまった。
ホテルに一人だと今がどこで何時なのかすっかりわからなく
なってしまう。目が覚めたときにはまだ薄明るかったのだけど
まだまだいくらでも眠れる気がした。そして旅の始まりに特有
の倦怠感に襲われていた。

日常の疲労から解放されるのと言語の違いに疲れ果てるのと
が同時におこってひきこもりたくなるのがこのときだ。

ただこの日のドライブには心底感激していたので、もうひと
がんばりできるかな、するべきだなとも思ったのだ。

問題は日が落ちると道の様子が一変することだ。前回警察に
とっつかまったのも、高速道路の入り口が暗くて表示がみえな
かったときなのだ。私はよほどロサンゼルスにいい思い出が
ないのである・・・それは違うか、いい思い出よりも大変だった
ことの色味が強すぎるのだ。

ドライブとあわせて、サルサクラブにドレスアップして出かける
のもまた、大変な「労力」を要するものである。サルサで食って
る自分とて、みんなと持っている感覚に違いはない。カジュア
ルであればあるほど、オープン&フレンドリーであるほど、踊り
やすいし楽なのだ。

ロサンゼルスの深夜のダンスフロアにはフレンドリーで人を
ほっておけない人と同じくらい、気位の高い人たちも存在する。
排除こそしないが自分のワールドを張り巡らせているような人
である。そういうところに飛び込んでいくには体力と気力の回
復がもうひとつ十分でないような気がした。

私はどういうシーンでも「一人ひとり」に興味と関心をしめすタ
イプで、それはたとえば生徒さんとのお付き合いにおいては
良い結果をもたらすが、クラブに出かけるようなときにはでき
ればスイッチを切ってしまいたいと思わずにはいられない。

全体をおおまかにとらえたほうがいいときというのが確実に
存在するものだが、自分にはそれが得意じゃないんである。

私は2時間かけて出かける準備をした。自分としては相当
キレイに化けたほうじゃないかと思う。

旅の準備をはじめたのはいつだったろうか。一ヶ月以上は
たっているが二ヶ月はたっていないのではないか。まだでき
るだけさぼれるところはさぼりたがる脳が、出かける前に
もう一回、最新情報を確認したほうがいいのではないかと
つぶやいてみてすぐにかき消した。身綺麗にするのにていっ
ぱいだったといってもいい。これから始める夜のドライブと
駐車、それにわずかとはいえ夜道を歩くことになることに
集中していたといってもいい。

カーナビを、水曜日の夜にとてもよいことになっているクラブ
にセットした。

夜のロサンゼルスはハイウェイに入らない限り昼間よりずっと
運転しやすいことに驚いた。車の量が少ないので後続の
プレッシャーをうけずに安全確認ができるのだ。それは嬉しい
驚きだった。これはいけるんじゃないかという気にもなる。

出かけるときにあがりにあがっていた心拍数は正常値に
緩やかに近づいていった。

カーナビがあと一回右折すればゴールだといっている。
私は心をこめてハンドルをきった。そしてコインパーキングが
「どうぞどうぞ」といわんばかりに空いていることにさらによい
気持ちになった。

先にコインをいれるのかあとでいれるのかをそういえば知ら
なかったな、と思った。表示はあとでけっこうです、という
感じにみえた。

クラブというものは遠くからでも目立つようにぴかぴか電飾を
飾っているものである。また、ちょっと夜風にあたりたい人や
常連ぷりを披露したい人が入り口のガードと今日の客層は
どうのなどと語っているものである。

そういう雰囲気がある店にはAMERICA’S BEST KARA
OKEと表示があった。どんなステージがあるのかどんだけ曲
がそろっているのかわからないけど、露出の高い女性たちが
出入りしている気配はなかった。

私はどんどん先へ進んだ。もっと進んだ。

そして、カーナビをつけた意味を少し考え直そうと思った。

考え直した結果、番地をみて引き返すべきだと判断した。


遅い、といってもいいだろうね。


夜道で番地をバッグから引き出したり、引き返したりするのは
スマートでも安全でもないことだ。私は一応用心して、さっさと
歩いた。進んではいないけどね。


バスケットのスコアカードをもとに戻すように番地の数が二つ
ずつへっていく。道のこちら側が偶数番地だというのは間違い
ないようだ。


あと八つ、あと六つ、あと四つ、あと二つ。


目指す番地だけが建物の壁から引き剥がされていた。


クラブはつぶれていたのだった。


私の車はその正面に忠犬ハチ公みたいに止まっていた。












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