June 2007

June 12, 2007

"Let's go celebrate!"

チャイナタウンの銀行
LAのチャイナタウン

には数多くの銀行が

あった。

 

そこには独特の秩序があって、混沌とした街に一種の

静謐さを醸し出していた。

 

サンディエゴには夜の七時半に到着した。

 

TさんとJ君は真新しい一軒家の2階を間借りしている。

リビング、寝室、台所、バスルーム。

質のよい家具を少量と、ところどころにかけてある

メキシコ産のタペストリーが居心地よさを醸し出す。

Tさんはカウンセラーで、J君はミリタリーに勤務している。

2人の落ち着いた生活には明るい穏やかさが漂っていた。

といってもTさんはアメリカでのリストラといったような

手痛い経験を経て現在に到っている。

J君はペルー人の母を持つLAっ子で最近サンディエゴに

越してきた。

私が感じたとおり、やっぱり住むならLAよりサンディエゴ

だという。海岸のスタバで不動産の雑誌を見つけた二人は

一気に家購入の夢を膨らませてもりあがっている。

それは見ている私にも幸福感をもたらした。

一緒にいてかえって寂しくなる人がいる一方で、3人が

五人、十人に感じられる人もいるのはどうしてなんだろう。


J君は音楽に対してマッドというかクレイジーというか、

彼そのものが音の弾丸といった感じの人。

私が訪ねた瞬間からあれ知ってるかこれ知ってるかと

お気に入りの曲をひっきりなしにきかせては、いいだろ?

たまんないだろ〜〜?と押し売りするのだ。

アフリカンドやロス・バン・バンといった黒っぽい系統を

特に好む。

彼は一度サルサのレッスンを受けにいったが、「脚をまっすぐ

伸ばせ」といわれたのが原因で二度と行かないそうだ。

「サルサを習ったやつの踊りって全員同じだろ?

ビュッ・バッ・チャッってさ(LAスタイルダンサーの真似を

しながら)。曲には速いとこもゆっくりなとこもある。

ボクの踊り方はこう(やってみせる。まさに全身音楽魂)。」


いたいた。いたよ。

こんなにあっさり見つかっちゃっていいのかな・・・

Tさんにネットを通じて連絡をとったのが1〜2年前。

会うのは今回が初めて。そしてそのダンナというのが

今まさに私が探していた「オーディナリー・ダンサー」。

その素晴らしさはバトル・ダンサーにけしておとらない。

見ているだけで心躍る。

2人を訪ねていなかったら、今回の旅は私にとんでもない

印象を残しただけで終わっていたかもしれない。


「RIOさん、ミモザって知ってます?」

ソーセージとキャベツがどっさり入ったオムレツで朝食を

とりながらTさんがきいた。

「ミモザ?みもざ?みもざみもざ・・・」

「カクテルです。オレンジジュースとシャンパンの」

「あー、あれね、あの高いの」

「Jがあれ飲まない?って」

「え”、朝だよ」

"He~y, let's celebrate!!"

"Celebrate what?!"

"It's a beautiful da~y!!!"


「僕たちはなんでもお祝いするよ〜

日曜なのに朝10時に起きた。

得した。」

そしたら今回のタイトルを叫ぶのだそうだ。


その夜、私がチケットをとっていた7時の列車に乗る前に

どうしてもオールドタウンのメキシカンレストランに

連れていきたい、とJ君はいってぶんぶん車を飛ばした。

私はその夜、ロスにもどってグラナダというクラブに行く

予定だった。ケイコさんにもピックアップをお願いしてある

のだし、なんとしても戻るつもりではあった。

J君は音楽だけでなく運転のほうもクレイジィ。

特に今日は急いでいた。

そして漫画みたいに最後の交差点で見事にかかった。

「ウウウウウウウウウウ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!! 」

最近きいたようなサイレンと最近浴びたような白色光線。

やられた〜〜〜〜〜っとJ君がハンドルをたたく。

まだ明るいというのに、こんなにでかい警察の車がどうやって

身を潜めていられるのか。

あの白黒はシマウマ方式で敵の目をくらましているのか。


威厳のあるコップがかつかつと近づいてきた。

元気いっぱいのJ君も、高いチケットきられる・職場に通告

されるかも・ただでもない時間がますますなくなるのトリプル

ショックでうさぎのミッフィーのように口をつぐんでしまった。

「どうしたんだ?」

警官はなかなかかっこいい。

「・・駐車しようとしたら前の車がぱこぱこはじめたんで

そっちに気をとられて一時停止を見逃しました」

身分証明がミリタリーなのとJ君の態度がしおらしいのとで

警官は情状酌量を検討しはじめたようだ。

あれこれと書類に書き込んで、一週間後にこれをもって裁判所に

行けとのことだった。

そこで罰金なり社会奉仕なりが言い渡されるのかもしれない。

もともと私に少しでも楽しんでもらおうと思ってやったこと

なのだ。申し訳なかった。


警官が去ると、J君はおろしていたウィンドウをぐいぐいぐいっ

とあげて高らかに宣言した。


"LET'S GO CELEBRATE!!"


 




"Do you have an accounty?"

初日のランチ

アメリカ到着初日に

いただいたランチ。

 

ケイコさんはアボガド好きでよく料理に使う。

スープのほうはメキシコから単身アメリカに

乗り込んだBFが作りおきしていったものだそう。

食事に関してはやはり同じ国籍の者同士のほうが

何かと便利だ。


金曜日。

ネットで知り合ったサンディエゴのTさんに会いにいく日だ。

車で30分のユニオン・ステーションまでケイコさんに送って

もらい(私の車はその日の午前中に返してしまった。週末は

車は二台いらないことがはっきりしたからだ)、私は今回の

滞在中はじめてサルサからつかの間離れる時間を得た。


はじめての列車には驚くことばかりだった。

まず、駅においてあるソファがものすごくゴージャス。

茶色の革張りで、オークか何かの木の枠でどっしり作ってある。

一日電車待ちをしても、サンドイッチと本さえあれば全然苦に

ならないだろう。

次に、列車の旅でも飛行機と同じようにバゲッジを預けて

目的地でがごんがごん出てくるシステムになっている。

私はこの日はじめてロサンゼルスの中心街を歩けることに

なったので、送るというのでなく荷物を一時預かりして

もらいたかった。

ところがロッカーはなくて、有人のカウンターに預けて

札をもらうシステムになっている。

窓口には警官みたいなおねえさんがいて、列車のチケットと

IDを見せろといってきた。

二時間荷物を預けるだけのになんでチケットがいるんだよ・・・

ぶつぶつ言いながら買いにいく。

窓口にはすごい行列ができていたので、クレジットカードが

通せる自動販売機(一台しかない)でサンディエゴまで、

34ドルの切符を購入した。

便を指定するシステムだから、日本でいう特急に近い。

それからもう一度窓口に出直したらシャッターが下りていた。

まあ、ありがちっちゃありがちなんだろうけど。

ため息が出た。


30分がかりで荷物を預けて向かった先はチャイナタウン。

トラベラーズチェックを現金にするための銀行が

GARDENA市には見つからなかったからだ。

インフォメーションできいたらチャイナタウンにアメリカン・

バンクがあるはずでそれが一番近いとのこと。

徒歩10分ならいいか、と炎天下の中散歩をかねて駅を

あとにした。


駅のすぐそばにメキシコの民芸品店や料理店が並ぶ一角が

ある。極彩色の衣装は彼らの浅黒い肌には似会うだろうと

思われたけど、私が着てもお互いに不幸なだけ。

写真だけにとどめておくことにした。


それからさらに5分歩くとチャイナタウンに入る。

あたりは朱色と漢字でいっぱいだ。

ここには郊外と違ってアジア風「ぶらぶら歩き文化」が

残っている。

小さなおばちゃんたちがビニール袋をさげてサンダルで

ぺたぺた歩く姿をもう何年も見ていなかった気がした。


一番近い銀行はアメリカンバンクではなかった。

中華系の銀行がその手前にいくつもある。

インフォメーションの白人のおばちゃんにとって、中華系の

銀行はまったく関係のない世界の話なのだろう。

私はまっかっかなりに端正な趣のある大きな建物のドアを

押した。

"Can I change my travellers check to money?"

"Sure. Go ahead and wait over there."


アメリカ滞在中、私が心癒された場所の一つが実は銀行

だったといったらわかってもらえるだろうか。

一軒目はホームステイ先のGARDENAで、二件目はチャイナ

タウンで銀行に立ち寄ったが、そこにいる女性たちの

落ち着いた物腰と、一見さんに向けるまなざしのあたたかさ

には救われるような思いがした。

GARDENAの銀行では、口座のないお客さんとは残念ながら

取引ができないのだが、こうこうこんな口座がありますから

作ってみてはいかがですか?というようなことをさりげなく

もちかけられた。

ダメですはいさようなら、じゃなくて気持ちよく引き取って

もらうための工夫をする余裕があるのだ。

それだったらこちらも、残念ながらここには一週間しかいない

のだ、というようなことを言ってお互いに「それはそれは。

お役にたてずごめんなさいね」という顔で別れられる。


よいサービスの裏にはよいバックボーンがなければならない。

銀行に勤められることは海外では成功を意味する。

私は日本でそう感じたことはあまりなかったが、もしアメリカ

に暮らしていたら金融業というものに対する見方が少しは

違っていたかもしれないと思った。


銀行は何系列かによって勤めている人の顔も違う。

チャイナタウンの銀行の窓口に並ぶ女性は全員中国系だった。

窓口でトラベラーズチェックをさしだした相手は比較的若い

銀行員だった。トラベラーズチェックを扱うのがはじめて

だったのだろう。

彼女が私に尋ねた台詞が今回のタイトル。

滞在中二回目の質問だ。

でも、そうくるとは予期していなかったので思わず

"What do you mean by accounty?"

と聞き返した。

このころになると頭で考えるより先に言葉がでてくる。

すると全体を統括するベテランの女性が即座にやってきて、

新人さんにトラベラーズチェックの換金は口座と関係が

ないことをそっとささやいた。

そして彼女は私がいらいらしないように「待っててください」

とか「今控えをとりますから」などと何かと声をかけながら

仕事をすすめてくれた。


荷物預かりの女性と銀行の女性。

日本より社会的立ち位置の差がくっきりしている。

成功に対する情熱が桁外れのこの国の現実が、少しずつ

明らかになってゆく。

私は気持ちよく300ドルを得て、混沌としたマーケットに

入っていった。

履いていった靴はここには暑苦しすぎる。

素足にはけるサンダルがぜひとも必要だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




"It's up to you. "

GARDENAのスタジオ

 

アメリカのダンス

スタジオはどこも広い。

 

 

一つの会場に複数のグループやペアが入ることもよくある。

また、社交ダンスとサルサはジャンルとして近い立場に

あって、同じ会場をよく利用している。

スタジオ予約できゅうきゅうする東京はやはりダンスに厳しい

環境といえるだろう。


グループレッスンはロスでジョビーのスタイリング、

サンディエゴでマイクという社交ダンサーから

ウォーキングとスポット(回転するときに視線を固定する

こと)のクラスを受けました。


ジョビーのスタイリングクラスでは10分近くにわたる

腹筋運動でばこばこにやられたよ〜。マドンナの曲に

あわせてストレッチと筋トレを同時にこなしていきます。

ありとあらゆるバリエーションを駆使した強烈な筋トレ

でした。翌日のお腹の痛さは・・・まあ泣きネタは3回

続けないってことでこれ以上はいいまっせん。


参加者は20名程度で、そのうち半分から三分の二がチーム

「ジョビー・ブラバ」のメンバー、それ以外が一般の参加者。

年齢層は一番若くて20歳くらい、一番上は40代後半の

貫禄のあるご婦人でした。

といっても女の固まりみたいな感じで色気たっぷりです。


中には明らかにプロフェッショナルというダンサーもいて、

ジョビーが振りを忘れると生徒席から先週はああだったこう

だったと声が飛びます。あれはちょっぴり冷や汗の出る光景

だったかな・・・


ビギナークラスでは7つ程度のシャインの振りつけを学び、

最後に曲にあわせて通していきます。


インターミディエイトのクラスではシャインに加えてクロス

ボディリードのバリエーションを学びます。

女性の主導でクロスボディリードの前半1・2・3に飾りを

つけていく練習です。

これは完全に女性の判断でぽんといれていいことになっています。

このときの台詞が今回のタイトル。ペアダンスの中で女が

やっていいことと悪いことの区別も今回の収穫の一つです。

男性のほうもびっくりしないで、後半5・6・7をいつも通り

リードしてください。


足腰がかなり強くないと一瞬で決まらないので(時間にすると

2・3秒の間にやりきらないといけない)、純粋に体力と筋力が

必要だった。この練習は女性が二人一組になって、一人が男性

の役をしながら行います。

私はたまたま前述のご婦人がお隣だったので組になりました。

相当強いテンションで、LAスタイルの女性の重みがリアルに

わかって興味深かったです。


それからサンディエゴで教わったウォーキング。

これは社交ダンスのルンバ用の歩き方だ、といわれました。

社交ダンス経験者の方は今度、同じことをやったか教えて

くださいね。

前に進む際、四段階にわけて足をすすめていく練習をしつこく

繰り返します。死ぬほど退屈だけど筋肉がぶるぶる震えてくる。

いい練習してるなあと感心しながらうんざりしてました。

音楽が古いホテルのロビーにかかってるみたいのだったんだ

もん・・・


でもこの歩き方ができるとちょっとしたことでもサマになるな、

と思ったので、これからもずっと続けることにします。


スポットのほうは頭を前方に残して回っていくもので、いわゆる

トラベリングターンの練習でした。

両方とも綺麗にサルサを踊るためには必須かなと思います。

社交ダンスがサルサのレベルアップに直結することを実感した、

非常に実り多い時間となりました。


ただし、サルサの場合ダーティな魅力も捨てがたいものがある

ので、帰りの飛行機の中でこれらのエッセンスをどうレッスンに

とりいれるべきかじっくり検討しようと思っています。

 


 




June 11, 2007

"You should be more careful."

パンケーキ

アメリカンサイズの

ブルーベリー&

サワークリーム

パンケーキ。

 

 

車で移動していると緊張のせいかものすごくお腹がすく。

でも途中でちょっとつまむとかトイレに行くとか、そういう

あたりまえのことが容易にできない。

海外に出ると荷物と自分の管理がダブルでめんどうだ。

車も。

 

ケイコさんが「駐車違反で38ドルも払わないといけない。

どうしよう、そんなお金ないよ」と嘆いている。

アメリカの警察はものすごく厳しい。あっちこちに蜘蛛の

ようにひそんでいて、ねらった獲物は逃さないという感じだ。

 

私は夜のフリーウェイの入り口で見事にかかった。後ろから

「ウウウウウ〜」という爆音と真っ白なライトで脅されては

到底逃げ切れるものではない。アメリカで運転をはじめて

二日目。洗礼といえばいえなくもないが、あああ、また

ブログネタができちゃったよ・・・とつぶやくよりない。

後ろからはこちらのナンバーを控えたり、酔っ払いや危険

人物ではないかどうか様子を探っているのがひしひし伝わって

くる。たっぷり3分以上待たされて、サーチライトを照らし

ながらアジア系のこわもての警官が用心深く近づいてきた。

夜なので向こうも慎重だ。マニュアルのぐるぐるウィンドウを

開けるときの気分は無力なハッチだ。

 

"Do you have a license?" "Yes"

"Do you speak English?" "A little bit(ケイコさんから

できないフリをして見逃してもらったことがある、と聞いて

いたので、できないムードを演出する。別にわざわざ演出する

までもないんだけどさ)"

"Do you know what you did?" "No. What kind of mistake

did I make?"

"You drove into the ○○" "???"

"○○."


この続きの警官の台詞が今回のタイトル。


私は心で叫ぶ。


I can't be more careful!!!!!

It's my ma〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜x!!!!!


 

そんな気分で時速80マイルで走らなきゃいけないなんて

クレイジーだよね。

それってあとで計算したら時速128キロなんだよ?!

ゆっくり行きゃいいじゃんて安易に言っちゃやだやだ。

これだけ出さないと高速道路そのものに乗れないの。

追突されちゃうのよ。タフだった・・・


死にそうな気分で家まで走りぬいた。

フリーウェイのインターチェンジを間違えないこと、一般道に

入ってから左車線に入らないことで頭も体もふらふらだ。

家の前の狭い狭い隙間に車を押し込んだ瞬間が奇跡に思えた。

ギアをパーキングにいれ、ハンドブレーキをぎぎっとひきあげた

とき、体いっぱいに達成感がわきあがってきた。

すごい。やった。一人で夜のフリーウェイに乗って、走り

きったよ・・・

感動いっぱいでライトを消し、キーを手前にまわした。

車が静寂につつまれる。そして。


れ?

キーが抜けない。


がちゃがちゃ・・・しようと思ってもキーが何かにかまれた

みたいにがっちりロックされて動かない。

え?なに?なんで?


さっきの警官の○○のところを答えないと抜けないのかな?


私は2分くらいいろいろなことにトライして、とうとうばったり

シートに後頭部をぶっつけた。

どうして自分ていつもこうなっちゃうんだろう。

どうして最後の最後で馬鹿みたいなことになっちゃうんだろう。


ケイコさんはブラバのミーティングのあとそのままBFの家に

泊まるといっていた。

キーが抜けなければ私は家に入れない。

せっかく家まで帰ってきたのに車で夜明かし?!

今日は警察にとっつかまったんだよ?!

夕食は?シャワーは?ブログは?


私は有罪確実の被告みたいな気分で、隣家のケンちゃんちの

ベルを鳴らした。前の晩に間違って車を止めちゃって迷惑を

かけたので、お詫びに朝オレンジビターチョコレートをあげた

そのごめんなさいの乾かない舌でまた頼りに行かなければ

いけない。

自己嫌悪で死んでしまいたかった。


明かりはついているが、何回か呼び鈴を鳴らしても

返事がない。

そりゃそうだ。もう夜も遅い。

窓をこんこんこんこんとたたいて

「ケンちゃん、ケンちゃーん。」

と小声で呼んだら

「ちょっと待って〜」という声がきこえた。

これから説明する内容のアホさを思うと情けなくて涙が

出てくる。


ケンちゃんはとんとんとんとんと階段をおりながら事情を

きくと、「ん?ん?」とあちこちいじってみて「ギアが入って

ないのかな」とつぶやいたかと思うと、がこんとギアをいれ

直してあっさりキーを抜いた。その間およそ30秒。


ギアがパーキングにちゃんと入ってなくてキーが抜けない

なんて、これまで何回も運転して初めてのことだ。

アメリカで、深夜に、一人のときに、こういうことがおこる。

それが、私なんだ・・・。


私がめちゃめちゃ落ち込んでいるのを見て憐れをもよおした

のか、それからケンちゃんは30分間もアメリカでの運転の

失敗話を披露してなぐさめてくれた。

 

しんと静まり返った家に入る。

あああ、いつになったら泣かないですむのかな・・・。

アメリカ、三日目の夜。

 

 

 

 

 


 




June 10, 2007

"Do you think LA style should be showy?" "No."

パコ


フランチェスコ・エバンジェリスタ。

通称パコ、もしくは日本では

「クリちゃん」←髪型からだ

そうです。本人談。

 

 

もとサルサ・ブラバのメンバーで現在はジョビーとチームを組んで

います。

彼の教え方がいいとは日本でも聞いていました。

 


彼にはリードとフォローについての考え方をブラッシュ

アップしたいというテーマで教わりました。

むうう、実際すばらしかったです。

 

まず、ベーシックステップについては最初の一歩だけ

しっかりリードしてあとは気持ちよく流していく。

このとき手をフックの形にしたときの指の背のところを

女性の手のひらにあてて指示を出すとスムーズに入れます。


クロスボディリードはオープンポジションの右手だけで

できるように練習するとイメージがつかみやすい。

女性が半回転以上しないように、右手でまっすぐのラインを

描いていきます。これに左手を添えるイメージで完成させ

ました。


インサイドターンをかける場合概念が変わります。

前半は右手、4で左手にリーダー役をスイッチする。

実に明快で気持ちいい説明でした。


ライトターンは1・2・3の前振りだけで安心してはならない。

回転の数を決めるのは男性なのだから、前振りだけで

まわってもらおうとしてはならないし、女性も前振りだけで

そのあと自分が勝手にまわってはいけない。

もし後半のリードがなければ女性はそのまままわらずに待って

いなければいけない。

これは長い目で見て非常に重要なことなんだよ、とことさらに

強調していました。


レッスンのあとの雑談の中で、LAスタイルについてのパコの

考え方をきいてみました。

「何がLAスタイルをLAスタイルたらしめていると思いますか?」

「強いていえばON1てことだけど、今はいろいろな踊り方の

人がLAに入ってきているからひとことで説明することは難しいね」

それに続いたのが今回のタイトルです。

みんなにとってもこれは興味深いところだと思いますので、

続きも紹介しましょう。

「パフォーマンスのときは別だよ。

でも普段の自分はナチュラルに力を抜いて踊っている。」

 

"And you think you ARE the LA style dancer?"

"YES."

 


スタジオを出ると夕日に包まれました。

今回の滞在中3回訪れたスター・スタジオ。

初めて自力で運転してきたとき、すぐそばまで来ていながら

入り口がわからなくて右往左往してクラクションを鳴らされた

のもいい思い出に。


駐車場に向かう途中でいかにもラテンなおじさんに声を

かけられた。そのまま通過して、はっと振り向く。

「ごめんなさい、今考え事してた。あなたはサルサを踊りますか?」

「踊る踊る〜♪」

「LAスタイルという言葉をきいたことはありますか?」

「ないね〜♪」

「LAに暮らして何年になりますか?」

「三十年だね〜♪」

 

オーディナリー・ピープル。

彼が危うく忘れかけていたことに気づかせてくれた。

その存在をどうとらえるかで私のスタイル、教え方は

全く違ってくる。

30年ロスに暮らして、サルサが生活の一部になっていて、

かつLAスタイルという言葉を一度もきいたことのない人が

この街にはきっと山ほどいるのだ。

いや、むしろそういう人こそが大部分なのに違いない。

 

先が見えそうで見えない。

あとほんの少しなのに・・・あとちょっとなのにともがき

ながら今日もまた一日が過ぎていく。

私はどこへ向かっているんだろう。

 

 

 

 

 

 




"You look like a little girl."

トヨタ
今回の旅行中

運命をともにした

トヨタ。

幸い私もヤツも

まだ生きている。

 

 

安い服があると教えられて訪ねたこのあたりは、主に黒人たちの

居住地域だった。LAの中にはブロックごとのすみわけがあるようだ。

 

LAスタイルの正体がいかなるものか。

これは今回の旅の最大のテーマだ。

LAスタイルはキューバン、ニューヨークと並んで

「THE」という冠詞を伴うにふさわしい存在感を発揮

している。

なぜ、どうして、この三つなのか。

アメリカは広い。

ラテンアメリカも含めたら絶句するほど広い。

その中で、なぜ、どうして、何をもってこの三つなのか。


スティーブンズ・ステーキハウスはLAスタイルの

ダンサーにとって欠かせないクラブ、と日本で聞いていた。

LAで最高のダンサーが集まるクラブの一つだということと、

日曜日に激安で食べ放題をやってくれるという二点において。

今回私は日曜にLAに滞在することができなかったけれど、

火曜のスティーブンズがいい、ということで行ってみることに

した。


スティーブンズ・ステーキハウスはその名の通り、れっきと

したレストランである。

真っ白のテーブルクロスがかけてあるところから、かなりの

高級レストランであることがわかるけれども、食事が目的の

人はほとんどいなくてみんなダンスに来ている。

前にバンド用のステージがあって、その前の空間がダンスの

ために解放されている。火曜はバンドはなしで、DJがプレイ

していた。


アメリカのクラブでダンサーに好まれる曲は日本とは違うよ、

とも聞いていた。

自由にダンスが構築できる曲がいいみたいだね、というふうに。

私が思うに、日本との最大の違いはチャチャチャが非常によく

かかるということ。5,6曲に一曲くらいの割合でかかる。

メレンゲ・バチャータはチャチャチャと同じかそれ以下しか

かからず、レゲトンはいっさいなし。

また、曲は全体的に渋好みで、サルサ・ロマンティカ系の

甘いのは全くかからない。ごん太系、とでも言おうか。

日本では大人気のマーク・アンソニーはアメリカ滞在中

一回しか聞かなかった。


LAスタイルについてはっきりした印象が見えてきたのは

実は後にロサンゼルスを離れてからのことだった。

比較の対象がないと、物事の意味はわからない。

ここに書くストーリーは私がまだLAの人々のサルサしか

見ていないときのこと。

 

私ははじめての本場のサルサをキューバで見た。

キューバ人のダンスはベースにソンとルンバを色濃く残して

いる。この二つのステップの上に、男性が女性を複雑怪奇に

まわしていく踊り方がのっかっているような感じだ。

ルンバは男性と女性が距離をおいて、ひとつのストーリーを

語るような形で踊っていくので、キューバ人も男女が離れて

踊ることに対して慣れている。それぞれが独立してうまい。

組んでもうまい。子供も老人もそれぞれにうまい。味がある。

というわけで、私にとって男女が別々に踊ることはごく

あたりまえの光景だった。


スティーブンス・ステーキハウスで「事件」がおこったのは

到着してシューズをはきかえてすぐのことだった。

一人の老人が近づいてきて私を誘った。

非常にうまい。いわゆる「サボール」のある人である。

いっさい組まないけれど、私はこの人のダンスはとてもいいと

思った。踊りながらさまざまな技、というか音のとり方を

盗ませてもらった。日本の老人にもごくまれにこういう感覚の

持ち主がいる、というような踊り方である。

3曲続けて踊ったところで私のステイ先のケイコさんがすっと

寄ってきて、「私の友達を紹介するから」とまだまだ踊りた

そうな老人から私を引き離した。

「あの人、みんなから嫌われてるんだよ。

リードしないんだったら誘わなきゃいいのにね」


クラブで同じパートナーを何曲も誘い続けるのはルール違反。

これはいちおう常識の範囲内である。

しかし、彼のようなダンスを踊る人がLAで嫌われている、独立

して踊る人が認められない、という事実はほとんど衝撃だった。

私はそのあと紹介してもらったケイコさんの友人たちと踊る

どころではなかった。呆然自失。

うまい人が認められないのか、ここは・・・。

LAほどの目の肥えた人々の集まる大都会で、多様性が認められ

ないとしたら・・・あのようなサボールの持ち主はどこへ

行けばいいのだろう?

本来なら拍手喝采を受けてもいいような技量の持ち主なので

ある。ある意味ここの読者がもっとも望んでいるものを持って

いる老人だったといってもいい。それが、リードしないからと

一蹴されてしまうLA。これは現実なのか。

何かの間違いじゃないのか。

 

私は動揺して、そのあと踊るどの人とも楽しめなくなった。

数人踊ってまったく手ごたえのない状態で、追い討ちをかける

ように私を悲しませる出来事がおこった。

私を誘った非常に紳士的に見えた黒人の長身の男性が、

踊りながら周囲に目配せをするという最悪のルール違反を

はじめたのだ。

クラブの常連としてもっともやってはいけない行為である。

一曲が永遠に感じられた。

早くここから逃げ出したい。

そのとき感じたのはそれだけだった。


フロアを抜け出し、周囲を取り囲むようにしつらえてある

バーカウンターの後ろで人々でいっぱいのフロアを見ていた。

見ているような振りをしていた。

こんな思いをするために私はこんなに遠くまで来たのだろうか。


「今夜オレとすごさないか」

からみつくようなスペイン語とともに抱きすくめられたのは

その直後。

一瞬体が凍る。

思い切りふりほどいて後ろを振り返った。

「カルロス?!」

ケイコさんの友人で、昨晩紹介されたばかりのカルロスが

大笑いしている。

それに続いたのが今日のタイトル。

「ひどいなあ・・・!!」とあきれて見せてから

「うん、そう。まさにそういう気分だった。踊って?」

もう一曲の半ばを過ぎていたサルサで踊った。

昨晩はまったくあわなかったカルロスだが、今日は少しましに

なったかなという感じ。

 


さっきの無礼千万の黒人の男が近づいてきたのはその直後

だった。「もう一曲踊りますか?」と言う。

なんだか誰も信じられなくなっていた。

どうでもいい気分で応じる。

ところが彼の態度がさっきと少し違うのだ。

気をつかってリードしてくれるのがわかる。

・・・わけがわからない。


二曲踊ってドリンクを注文するカウンターに誘われた。

皆車で来ているのでアルコールをオーダーする人はほとんど

いない。

彼もミネラルウォーターを二本頼んで、私に向き直った。

まず自己紹介をしてくる。私も名前くらいは言う。

「今度日本に行くんだけれども、連絡先を教えてもらえますか」


今晩はどうかしている。

全体がちぐはぐなのだ。

いわゆるナンパというのとも感じが違う。

彼は立ち振る舞いや話し方、物腰全体に知性がある。

そういう雰囲気は、どうしたってつくろったりごまかしたり

できないものだ。

ビジネスで日本に行く、という言葉につくりはまったく

感じられなかった。

どうしてそんなこと言うんですか?という顔、以外に

できることがない。

社交辞令を続けてその場をしのぐ。

とにかく本意がわかるまでは油断はできない。

さっきあれほどいやな思いをさせた張本人なのだ。

LAのサルサについて話を持っていき、ここの人たちの踊り方は

とても難しく感じられるのだけど、と言ってみた。

ここにいかにも来慣れている感じの彼がなんと言うか、この際

だから切りかえしてみよう。

「難しい?どうして?!」

彼はびっくりした顔をした。


"Your dance’s very good."

 

「へ?」


シンプルな言葉が衝撃だった。

さっきまで人をばかにしていたではないか?!

 


" 'cause you feel music like we do!"

 

「は?」


"You have your own style.

My friends thought so too while we're dancing.

You don't have to be showy. Passion."

 

私はホントに子供みたいにわんわん泣き出してしまった。

いるんだ、こんな「サーカス一座」みたいな人たちの中に、

私のやってることわかる人が?!

 


帰り際、ケイコさんに

「○○さんとずっと話してたでしょ。

あの人いいリードするよねえ。何話してたの?」と言われた。

言葉が出てこない。

ただ一人、霧の中に放り出されていた。

ロス二日目の夜のことだった。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 




June 09, 2007

"Use your partner!"

リズ・リラ

 

 

リズ・リラには全部で

3回会った。

 

 

一度目はクラブで。

二回目はプライベート・レッスンで。

三回目は彼女のバースデーイベントで。

”Oh my GOSH!!”が口癖の彼女はめっちゃ可憐な女の子

でした。

 

レッスンでは彼女の十八番である高速ターンの秘密に

迫ってみました。


まずぐぐっと骨盤を締めて(床に垂直につきたてるように)

と言われました。脚が閉まるからというのがその理由。

それからみぞおちをぐっと引き締めたうえで胸を突き出し、

重心をかなり前めにとる。これが彼女のベーシックの姿勢

になります。

回転の瞬間体を上にひきあげ、重心を前にとった分ストップの

際前に倒れそうになるところを、お尻回り、腹筋、胸筋を内側に

踏ん張ってふらつきを体内で消化するそうです。

ストップのときにかかるGはものすごく強くて、一回転だけでも

「うっ」てくらい力がいるんです。もっともっと鍛えないと、

と思いました。


ダンスの最中に前にかかる力の一部は男性に吸収してもらう

ように、とのこと。

そのときの彼女の台詞を今回のタイトルにしました。

フリースピンも男性のテンションを「利用し返して」と。


脚が細くてまっすぐで強いのと、上半身が筋肉でぱんぱんに

張っているのが彼女の体の特徴です。

8センチヒールをはいた形にもう体が出来ちゃっていた。

腰まわりもめちゃめちゃしっかりしてるし、なんていうんだ、

特殊任務用戦闘機って感じかな。


ところで彼女に関しては出発前にちょっと気になることが

あったのね。彼女の日記の最新版が「最大のリベンジは

ハッピーに生きること」という内容だったの。

何がおこったのか詳しくは書いてはいなかったけど、なんだか

妙に気になって・・・いったいなんなんだろうって。

会ってみて、その背景が少しわかったような気がした。

もちろん私の想像にすぎないけどね。


リズの周囲にはサルサ業界の人よりも社交ダンスや

タンゴの関係者が多いみたいだった。

彼女がずっとそういう世界で練習してきたからだろうね。

プライベートレッスン場は体育館みたいに巨大な社交

ダンス用の練習場で、非常にハイソな感じの人々が

集っていた。

バースデーパーティーのゲストにはサルサのペアが二つか

三つ、あとはタンゴ、サンバ、社交ダンスにジャグリング

なんて変り種も登場した。

とにかく多彩。

でもそれはそのまま、彼女のサルサ界での脆さを意味して

いるのかもしれないと気づいた。

サルサに限らずダンス業界は勢力争いが絶えない。

リズは「それはサルサじゃない」といつもいつも圧力を

受けているようなのだ。

彼女の教え方はベーシックからしてちょっと変わっていた。

実際、ほかのインストラクターが「自然じゃない」と一蹴

するのも聞いた。彼女のダンスは完全に一個の作品として

成り立っているけど、それでもそうと認めたくないダンサー

がどっさりいる。そういう中で彼女は日々を生きている

のだった。

 

今日彼女は27歳になった。

女学生みたいな白いドレスを来たリズがにこにこきゃあきゃあ

ゲストに声をかけまくる。

それはもう見ていて切ないくらいだった。


バースデーパーティーにはリズママが手作りのすごいケーキを

運び込んできた。フルーツが乗ってカスタードプリンを

サンドしたかなり本格的なチョコレートケーキ。

「こんなにおっきな会場を私のバースデー会場にして

もらえるなんて信じられない!」と胸の前で手をあわせる

リズがこれからもずっと元気でいられますように。

 

 




June 08, 2007

" It's like a Roller Coaster!! "

スタバ

 

 

一日一回寄って

しまうスタバ。

 

 

激甘ケーキがストレスフルな毎日を支えてくれる。

 

車を借りたのはロスに到着して二日目の昼です。

ここには驚くほどたくさんの日系人がいて、日本語の

使える店もいっぱいあるんですね。

そういうところだけ選んで生活すれば日本にいるのと

ほとんど変わらない生活がことたりてしまうくらいの

ものが揃っていることがわかりました。

生活基盤さえ整ってしまえばむしろ日本よりくらしやすい

というのもわかるような気がします。

なんたって連日晴天なんだもの。

 

私のステイ先のGARDENA市はロスのダウンタウンから

車でおよそ1時間走ったところにあります。

関東でいうと川越とか立川とか、そんな存在にあたる

のかな。フリーウェイをぶっとばして移動するのが

あたりまえになっているので「ここまで圏内」の感覚が

全然違う。電車社会の東京と車社会のロサンゼルスは

いちいち感覚が狂います。

 

GARDENAは日系人の割合がロサンゼルスの中でも相当高い

ほうだということを、行きの飛行機の中で知りました。

ロスの情報を出発当日の朝がーがーぴーってプリント

アウトして持ってきていたのね。

おいこまれないと真剣に読もうとしないからさ。

そこでロサンゼルスの広さと公共の乗り物のなさをはじめて

知ってちょっとびびる。

ほんとだ、車ないと、ぜっっっっっったいダメだよ(←ロス

経験者が全員言う台詞)ってこういうことだったんだ・・・

バスも二時間来なかったり、運転手がルート運転の最中に

ちょっととまってジュース飲んだりとか、すごくゆるいんだ

そうで。ストレスたまんなくていいですね、仕事がこんな

感じでよければ。

 

さて、レンタカー会社も日系のが山ほどあって、電話して

日本語を話していいんです。拍子抜けする。

多分ハワイもこんな感じなんでしょうね。


レンタカー会社の窓口でもっとも悩んだのが保険です。

日本だと免責するかしないかだけ決めればいいのですが、

こっちは州の義務の保険のほかに、自分の怪我、自分の車、

相手の怪我、相手の車の四つについて自分でオプションを

選んでいくようなイメージかな。

海外旅行保険に入っているからそれとだぶらないよう

にしないともったいない。

選び方で一つで出費が一日5〜20ドルも変わってしまう。

はじめて自分がかけてきた海外保険の契約書なんて真剣に

読んだよ。

こっちの過失で相手にぶつけちゃった場合、さっきの

四つ分の面倒を見ることになるけど、そのうちいくつが

いくらまで保障されているのかな・・・。

よーく読んだら、どうやら相手の体と車が未保障らしいので、

そこだけオプションの保険をつける。

これで一日プラス13ドル。

こちらが持っている保険のコピーもしっかりとられます。

こういうややこしい手続きは英語ではちょっと無理。

日本語が通じるってのは節約に直結するのね。

逆にだからこそ外国語はやっといたほうがいいわけだ。


さて。ルームメイトのヨーコちゃんによると、アメリカに来て

免許もとったけどこわくて乗れない日本人もいっぱいいる

んだそうで。それくらい、こわい、と。

私はそれを聞く前に乗っちまいました。

そして。そこに待っていたのは・・・


・・・WELCOME TO HELL!!!!!!!!!


左右がさかさまになるのがこんなに頭のねじをぶっとばすもの

だとは!!!

鏡の向こうの世界に放り込まれたみたいだ。

私は普段はかなり男前な性格だけど(ただおおざっぱなだけ

だと最近気づきだしたが)、車に乗ったときだけはめっちゃ

「女らしく」なる。つまり、周りが見えなくなる。

もう、ホントにめっちゃくちゃだ。

なかでも参るのがこの二つ。まず、右折は赤信号でもやって

いい。右折のときは一時停止してからそろそろ様子を見ながら

前に進んで、車がこなければ行ってしまわねばならない。

赤なのに行かないと怒られる。んなバカな!!!

次。信号のない四つ辻では、来た順に、もっと正確には

一時停止した順に行かねばならない。一時停止の秒数は

きっかり二秒。

1・2と数えて3で即発進しないとクラクションで脅される。

いっぺんに3台きても4台きてもこのルール。

どの車が最初に来たかなんてわかんねーよ!!!と叫ぶ。

しかもこういうポイントが2〜300メートルに一回くらいの

割合ででてくる道があって、そういうとこだと「走って止まって

ワンツーゴー」の永遠なる繰り返し。

10数回やっていると、交差する車がきてもワンツーゴーして

しまう。

そしてなんといっても・・・ロスの大動脈・フリーウェイ。

これに乗らないとどこにもいけない、でもこれが・・・

6車線ある首都高速、みたいな感じといったらいいのかな。

常に車が入ってきて、常に他のルートと交差していて、

常に出口があって、常にかけひきがあって・・・

数ある車線の間を縫うように正しいルートを選び続けないと

目的地にはつけない。

今日のタイトルは、私のはじめてのフリーウェイ(ロス到着

二日目、だよ?!)でケイコさんが友達とケータイで電話

しながら言った言葉。

ときは夜。時速80マイル(100キロ以上)。

逆巻く車の列、テールランプ、とぐろを巻くフリーウェイ。

「車線変更の前に目視して!」「右よりすぎ!」「ブレーキ!

(私は日本で高速道路では極力ブレーキを踏むな、スリップ

するから、と思い込んでいた。教習所でうけた、たしか雨の

ときにおこるというハイドロなんとか現象のイメージが強すぎ

たのだろう)」

きわめつけはこれ。進路変更のサインを出そうとすると、

ワイパーがうざいハエのようにちゃっちゃかちゃっちゃか

動き出す。

アメリカの車はワイパー操作がハンドルの右で、ウィンカーが

左についている。

もうどうしたって無意識に右手が動いてしまうのだ。

高速での車線変更というもっともストレスフルな状況で、

サインは出ず、ワイパーは飛び交う、しかもここを逃すと

行くべき一般道に戻れないのだ!!!

 

絶叫マシーンと化したトヨタは、二つの貴重な命と一つのあまり

貴重とはいえない命をのせて夜のフリーウェイを迷走するの

だった。

 

 

 


 




June 06, 2007

”First Bend.”

ジョビー
元サルサ・ブラバの

リーダー三人の一人、

ジョビー・マルティネス

(もとのジョビー・バスケス、

通称ジョビー)。

 

 

今日(※原稿を書いた6月4日)は彼女の個人レッスンを

受けました。

ジョビーはジョシー・ネグりアについで日本のサルサ界で

大々的にフィーチャーされたダンサーです。

顔が驚異的に小さい。

わかっちゃいるけどびっくりする。

体のほうはというとパンチがきいててヒップがおっきい。

感触でいうとゴムまりみたいな感じ。

適度な重みがあってびよんびよんしている。

 

レッスンではフォローの読みとスタイリングを中心に

構成してもらいました。1の足をしっかり後ろに踏む

こと(テンションをかけるため)、回転前のテンションは

強めにしてまわりはじめたら抜くこと(男性がコントロール

しやすいから)、指を常にフックしておく(これも男性が

コントロールしやすいから)。以上が通常の注意点。

そのほか、わざとするとき以外は腰がぶれて膝がくるん

くるんしないように、CBLで特殊なスタイリングをつける

場合は女性主導でよいのでテンションを高める(男性も

それをキャッチして強くかけなおす)こと。

それから男性の背後に女性がまわる場合、背中あわせか

片方の腰を重心にして横向きに立つ(コパ)かを

判断する方法を学びました。この判断は非常に繊細さが

求められる部分で、固定したパートナーとの猛練習がいるな

と思わされたところでした。

合宿ではまさにこういうのをやらないといけないな・・・。

 

彼女は重心を低くして床をぐいぐいなめるように踊るのが

スタイルです。

CBLのスタイリングでも

「FIRST BENT AND MOVE YOUR HIP」というように

たちっぱなしで足が棒立ちにならないように指導されました。

この、腰を落とすというか中腰というか、低い姿勢をキープする

練習が個人の力量として特に求められる。スクワット、だね。

 

 


レッスンをうけると頭も体もへとへと。

アメリカにいったら絶対食べといでね、といわれていた
   
ハンバーガーのカールス・Jrに行きました。

ひとつを二人でのシェアで充分。

たっかい(ポテトとドリンクがついて7〜8ドル)けど

ほんとにお肉がうまーい!

今回ステイさせてもらっているあねごのケイコさんは

アボガドが好物なので、それが入ってるのにしました。

ほんとにがっぽり入ってるのね。

たしかに野菜や果物は豊富です。

 

おなかのガソリン満タンでクラブへGO!

SACHI(6400 E.PACIFIC COAST HWY

LONG BEACH CA 90803)というクラブに行ってきました。

月曜日だけどSACHIには充分の人出がありました。

なんでも、バンドがくるという噂を流して人を集めたらしい。

実際はバンドがくるのは来週になってました。

しかし・・・そんなことでぷんぷんするわけないよ〜

だってフロアではあの、あの、だよ、まさにあの、

「サルサ界の薔薇」の誉れ高いリズ・リラがふわふわ踊って

いたんだから・・・

わお・・ここ、ロスなんだ・・・ってこのとき実感しました。

 

彼女は棒のように細くてまっすぐな脚に高いヒールをはいて、

そのただでも8センチあるヒールの踵を床に一回もつけること

なく滑るように踊りとおしていました。

驚異的なキープ力。バレエダンサーがポワントのまま踊って

いるような感じ。彼女のダンスはサルサじゃないって言われる

こともあるそうだけど、この立ち方で彼女は一つのスタイルを

確立したんだなということがよくわかりました。

ジョビーの床をなめるようなサルサ、リズの空中浮遊のような

サルサ。このどちらもがLAのサルサになくてはならない存在に

なっていることが不思議だったし、同時に自分のスタイルを

つくりあげることが非常に大事だなと思ったのでした。

 

そしてフロアのそのほかの人々ですが・・・

コンビネーションの合う・合わないにこだわる度合いは日本人

よりロスの人々のほうがはるかに上だよ。

これは今回の旅のテーマの一つだったけど、さっさか初日で

解決。彼らはマニアックにこだわりぬいてる。

語ることはしないけど、笑顔の中にも非常にシビアな感覚を

持っていることはすぐにわかった。

そして、踊れない人はクラブには一人もいなかった。

うまいか未熟かはあっても、全員が自分のスタイルを持っている。

私は彼らのやりたいことを読むのに集中していたけど、自分の

体が弱すぎることを痛感した。もっと床とお友達にならないとな、と。

10人くらい踊って、中に1人か2人すごく相性のいい人がいて、

何曲か連続で踊りました。

感心したのは、曲を利用するばかりでなくそれをパートナーの

体を通して表現する技術を持っている人がいるってことでした。

何千回も踊っているとそうなるのか・・・と。

これは練習どうこうできるもんじゃないと思うしかなかったかな・・・

 

ロスの男性も、相手にあわせて自分の踊り方やレベルをコント

ロールするなんて器用なことはしないです。

それはもうインストラクターレベルの人にしかできないことなの

でしょう。

これがオレ様だ、という感じでがんがん出してくる。

女性がそれにあわせる能力の高さには本当に舌を巻くしかない。

どんなわがままなリードでもきっちり見事に消化していく。

ええ?とか、ああ?とかいうような顔をほとんどしない。

何しろ女性の「あわせるレベル」が高い。

それも自分を殺すという感じではなくて、許された時間の中で

ちゃんと自分を魅せながら。

 

オレ様軍団の男たちよりも、涼しい顔でとんでもないことを

している女性たちに一票。

それが、初日の感想です。

 

次回はいよいよRIOのレンタカー体験記です。




"You make it?"

部屋
ロスではケイコさんという

ダンサーのお家にホーム

ステイしています。

 

こんなお部屋です。

ピンクのバッグは今回の旅のために買ったもの。

830円なら悪くないでしょ。

 

2LKを日本人の女の子2人がシェア。

台所なんかがすごく広いのですごしやすい。

ケイコさんは自分のベッドをリビングに移動して、私に

お部屋を譲ってくれました。

ボーイフレンドはメキシコ人で、彼女の巨大なお姫様ベッドを

移動するとき手伝ってくれたそうです。

日本のクラブでのラティーノの評判の悪さ(即口説き

即エッチ、即結婚即離婚)をきいて悲しんでいるとのこと。

ケイコさんもロスで彼の友人たちとつきあってみると

みんな控えめで普通なのにびっくりしたとのこと。

やっぱりところ変われば、なんだね。

あたりまえだけどなんかほっとする話。

 

さて、今回のタイトルは私が最初に印象を受けた英語。

ロサンゼルスの空港で早速ケイコさんにケイタイから電話

しようとしたら見事に電波入らない。なんのために海外

ローミングしたんだよっとぶつぶつ言っていると、空港で

困った人に声をかける係の人に「大丈夫?」といわれ

公衆電話のありかと50セントいることを教えてもらう。

両替所にいってコインをゲット。公衆電話から無事電話

することができました。

やれやれ、とアメリカでの記念すべき初買い物・チューイン

ガムをくちゃくちゃしながら外に出ようとして言われたのが

今回のタイトル。一瞬の混乱のあと、ああ、そっか〜と。

うん、できたできた。できたよ!

きっと、これからもできるよ。

I'll make it!

 

種明かしをすると、海外に出たら電波が変わるので

ケイタイの設定を変更しないといけなかったんだよね。

てんぱっててもちろんそんなこと忘れてました。

今は大丈夫、つながります。

 

そういえば今回、クレジットカードの暗証番号でも出発

直前めちゃめちゃてんぱってました。

「海外にいくとサインじゃ買い物できないから、暗証番号

覚えてないと大変ですよ〜」と和○でM様が言う。

「え”、暗証番号なんて覚えてないよ」

「忘れたら郵送してもらえますよ」

「今日金曜日。出発月曜日」

「・・・新宿か渋谷のカウンターに行って『あたしなんだよっ』って

キレてみせて、何が何でも教えてもらうしかないですね」

 

結局、カード会社に電話してみたところ、郵送以外何が何でも

教えてやらないとのことでした。そりゃまあそう・・・だよね。

正論だけどむかつくなあ!正論だからこそむかつくなあ!

 

そして。そのあとありとあらゆる店で「暗証番号で買い物でき

ますか?」と聞いてみたけど、なんと日本では暗証番号で

買い物できるところは空港も含めて一軒もありませんでした。

珍しい人だなあ、とすごく奇異の目で見られました。

暗礁番号だよこれじゃあ・・・

 

そのまんまとうとうアメリカにきてしまった。

買い物してカウンターで「unidentified」とかなんとか何回か

いわれたら逮捕されそうじゃんよ・・・とどんどんブルーになっていく。

そしたらホームステイ先のすぐそばにあるMARUKAIという日系

スーパーに、クレジットカードからキャッシュをひきだせるという、

役割の割にみじめったらしい機械がおいてあるのを発見→くいつく。

私はここにシャンプーとコンディショナーとランジェリー用の

洗剤を買いにいったんだけど、潜在的に求めているものは即

目にとびこんでくるものだ。

unidentifiedはブティック店員に言われるよりは機械に言われた

ほうが数段気分がましというもの。

ここで引き出そうとする「素振り」を見せてみればいい。

私は何回か操作をまちがえたあと、機械に自分のクレジット

カードを認識させ、「暗証番号を入力してください」の画面まで

到達した。

震える指で(←ホントよ〜)四桁の番号をいれてみると・・・

”HELLO, MISS RIO!”って名前入りのメッセージが!

こんなに気持ちよくCANCELボタンを押したのは生まれて

初めてだ。ひゃっほ〜い!I make it!!

 

次回は初レッスンの模様をアップします。

愛を、暗証番号抜きで!




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